カモシカについて

10歳からの3年間、盛岡市の三ツ割に住んでいた。
高松小学校の裏山と岩手県営野球場の裏山に挟まれた自然豊かな所で、家の前には庭がわりの広い草っ原。小学生だった私は一人で、あるいは誰かと、その野山を駆けまわって目いっぱい遊び、自然を大いに満喫した。虫捕り、木登り、ターザン、秘密基地作り、パチンコ、凧揚げ、パラシュート投げ、スキー、ソリ、雪渡り、…。遊びに遊んだあの頃の経験が確実に今の自分のベースの一部となっている、と事ある毎に実感する。子どもの頃は外遊びを沢山するべきだ。予後が良い。

さて、家の前に広がっていた草地は、その草地の奥の斜面にある小さな林檎園を管理する農家の私有地だったらしい。ある時いつも通りに遊んでいると、どこぞの婆さま(草地の持ち主だろう)が駆け寄ってきて、ものすごい剣幕で「この悪ガキ、ここで遊ぶんじゃない!」と怒鳴った。ビックリして家に逃げ帰ったところ、その婆さまはわざわざ家まで追ってきて玄関を開け、悪ガキと、居合わせた悪ガキの母を怒鳴りつけたのだった。婆さまが帰った後で母からは「そういう時は家じゃないところに逃げるのさ。」と言われた。ビックリしていてそんな機転が利くわけがないだろう、それにまさか家まで入ってくるなんて予想できないし、と今なら思うが、その時は自分のために母親が怒られたことが申し訳なく、また自分がうまく立ち回れなかったことが情けなく、大いにガッカリしたものである。
その後その婆さまの姿がチラと見えたときは草っ原で遊ぶのは諦め、代わりに山に行って楽しく遊んだ。とは言ってもあの後婆さまを見かけたのは5回もない。あの短気さからして、きっとそのうち頭の血管が千切れて死んだのだろう(笑)。

家の目の前の草地についてはもう一つ思い出がある。1990年代初頭は第二次オカルトブームの走りの頃で、超能力(Mr.マリック!)、心霊写真、宇宙人、UFO、エイリアンアブダクション、人面魚、人面犬などが大流行し、それに関連するテレビの特番が小学生の恐怖心を大いに煽っていた。そしてご多分に漏れず、小学生の私の恐怖心も大いに煽られた。
特にも怖かったのが、UFOがキャトルミューティレーションなる残虐行為を行う、という話だ。
アメリカの牧場で、一夜にして多数の家畜が体の一部をスパッと切り取られる奇っ怪な事件が多発。しかもその傷口の大きさに対して周囲の血痕があまりにも少ないという謎。そんなキャトルミューティレーションが発生する前後には、同時にUFOの目撃が相次ぐ。UFOに乗った宇宙人が地球の生物の調査のために臓器を収集しているのではないか、というのがもっぱらの噂である…。噂である…。噂である…。(脳内エコー 笑)
というこの話、困ったことに、広い草地を狙ってUFOが着陸してくるというではないか。何しろ目の前におあつらえ向きの広い草っ原があるのである。これはUFOが絶対に降りてくるに違いない。私の体の一部も夜中に目の前に降りてくるUFOによって切り取られ、血も抜かれて死んでしまうに違いない!あぁもう引っ越したい!!…と小学生の私は恐怖したのであった。恐怖心から、似たような夢まで見てしまった。そして「宇宙人は記憶を捏造する」というテレビの話を信じて「現実に起こったのに、夢と思わされているのかもしれない…!!」とまで思った私。テレビ製作者が聞いたら多分「君、そこまで本気で真に受けてくれてありがとう。報われたよ」とお礼を言うのではないだろうか。


ということで、タイトルのカモシカが置き去りにされているのでカモシカの話をする。
家の前の草っ原に、ある時カモシカが現れた。1回目は母とバドミントンをしている時、2回目は一人で遊んでいる時だった。1回目で母からあれはカモシカと言う、と聞き、私の中にカモシカなる存在が初めてしっかりと認知された。その体躯の大きさと尖った角にギョッとし、こんな恐ろしげな獣が家の近くの野山を歩き回っているのか、と衝撃を受けた(今の私なら山の中でクマに出逢えば似たような衝撃を味わうだろう)けれど、その後襲ってくるでもなくのんびりと歩く姿を見て、なぜか感激し、惚れ惚れした。2回目の時はなぜそうしたか分からないが石を投げた。そして偶然背中に当たった。一瞬ビク、としたがその後また何事もなかったように悠々と歩き去る姿に、やはり惚れ惚れした。
それから後はカモシカを見ることはずーーっと無く、意識することもなかったが、1997年に映画「もののけ姫」を観て、あ、シシ神のモデルの一部は絶対カモシカだ、と思った。が、それだけ。またずーーっと見ることも意識することもなかった。
結婚し、子どもが生まれ、その子どもと一緒に高松の池に行く機会が増えてから、ようやくまたカモシカと遭遇するようになった。そして再会して初めて分かった。カモシカに会えるとかなり嬉しい。小学生当時の感動が、自分の中のどこかに残っていたようだ。
とは言えさすがに高松の池に行く度に毎回カモシカに会えるわけではない。写真に収められた回数で言えば、ここ2年で3回のみだ。
ちなみに盛岡動物公園にもカモシカがいるということを、娘と一緒に行ってみて初めて知った。そこに行けばほぼ確実にカモシカに会える。長らく休園となってしまったが、それを含めて2023年春のリニューアルオープンを楽しみに待つこととしよう。

さてさて、このページを書き始めた時は、カモシカについてのウンチクを調べて載せて、合わせて今まで撮った写真をアップして、といったことを考えていた。が、前半で小学生当時の思い出を書き連ねたら、個人的に結構お腹いっぱいになってしまった。そんなわけで、この先はただ写真を載せて、まぁでもせっかくなので最近覚えた「ブログに動画を埋め込むテク」を試して、このページを終わることにしたいと思う。

カモシカの写真と動画

2020.4.24

高松の池から東に散策コースを進み、南部家の墓所がある付近で遭遇したカモシカ。のんびり休憩中。久方ぶりの再会に私はドキドキ。2020.4.24
同じ場所で別アングル。ある程度警戒はしているようだ。私が動く方向に顔を向けてじっと見てくる。2020.4.24
ゆっくり起き上がり、林の中に消えていった。カモシカのような足、という形容がある割に毛むくじゃらで短い脚ですね…と思いつつ見送る。2020.4.24
と思ったら少しして私の進路を遮るように再び現れた。しまった、心の声が聞こえてしまったか。後日調べて「カモシカ(羚羊)のような足」の羚羊(レイヨウ)は別の動物らしいと知る。2020.4.24
近くで見ると意外に筋肉質でゴツい。けれど目はつぶらでカワイイ。とは言え油断大敵。岩手県の「第5次カモシカ管理計画」を読むと、平成27年にカモシカによる人身被害が1件発生、と書いてある。大人しそうだからと言ってあまり刺激し過ぎてはいけない。などとカモシカに石を投げつけた私が言ってしまう。2020.4.24
記念すべき、ブログに初アップの動画。私のカメラ、というか皆同じなのかもしれないけれど、動画撮影モードに切り替えると若干光量過多気味になるんだよね。でも焦っていたので調整できず、白いままでちょっと残念。手っ取り早く、いざという時はオートモードにするクセをつけちゃおうか。2020.4.24

2021.11.18

どこかの爺さまが何やらヤケに怒って騒いでいるなぁ、と思ったら、画面の左の方からカモシカがトコトコとやってきた。あ、このカモシカを追い立てていたのか。変な人かと思っちゃった。いや実際そうか。などと思いながら、1年半ぶりにカモシカを写真に収める。パシャリ。2021.11.18
お、やっぱりこっちを向いた。さすが野生動物。しかし35mmレンズしか持っておらず、トリミングしてもこの小ささ。残念。35mmレンズのサイズで350mmレンズくらい遠くが写るカメラがあれば良いのに。もちろんイメージセンサーを10分の1サイズにすればそうなるけど、画質はそのまま、カメラ・レンズサイズは小さく、というのをどんどん追求していって欲しい。現時点で相当限界を攻めているとは言うけどね。あとは、できたとしても値段が馬鹿に高くなるんだろうね。2021.11.18
柵を軽々と飛び越えた。人間と違い野生動物の足腰は相当丈夫だ。足腰だけでなく、体全体が相当丈夫だ。30年前、石を投げつけても全く効かなかった(投げつけてはいけない)。2021.11.18
ああ、行ってしまった。2021.11.18
ところで全く関係ないが、この写真に看板が写っているように、この写真の右手奥で階段整備の工事がずっと続いていた。そして2022年4月に完成した。そしてそして、階段わきに「ウバメガシ」が植樹された!私が知る限り、岩手県でウバメガシが植わってあるのはここだけだ。数年後、今まで未収集だった新たなドングリが拾えることになるのが、今から非常に楽しみです。…ハッ、キャトルミューティレーションする宇宙人の気分って、こんな感じなのかも。

2022.4.13

桜の便りを聞きつけて高松の池に来て、花と鳥の撮影を楽しんでいると、後ろの林の奥からガサゴソと音が。もしやと思って振り返るとやはり、あなたでしたか…!!2022.4.13
しかしレンズを新調して良かった。発色も良いし、解像も良い。滲みもない。良い写真が撮れて気分も良い。2022.4.13
あなた、素敵ですね。2022.4.13
近くにいたのは、ちょっと仲良くなったバードウォッチャーさんと私のみ。その2人を全く気にすることなく悠然と歩を進めるカモシカ。間近でじっくり見るうちに、小学生の頃に初めて見た時の記憶が蘇る。あの時のように惚れ惚れとはできなかったが、あぁー、良いなぁ、と思うことはできた。自分の中に良い(?)部分が残っていたことに、ホッ。2022.4.13
角まわりがかゆいのか、木の幹にこすりつけている。2022.4.13
岩手県の「第5次カモシカ管理計画」を見ると、カモシカは群れることは稀で各自縄張りを持って単独行動し、盛岡市の平均生息密度は1.30頭/㎢(令和2年度)だという。どの程度実態に即した数値か分からないけれど、高松の池も同程度だとすると、高松の池周辺を無駄に広く見積もっても、3頭いるかどうか、ってくらいなのかな。2022.4.13
カモシカさんよありがとう。また元気に現れておくれ。2022.4.13

動画の埋め込みの方法も分かったことだし、これからは動画撮影のレベルも少しずつ上げていきたい。
あ、もちろんYouTubeアカウントの「弘中仁美」はhironaka222をもじった偽名です。

(2022.4.13)

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