啓蟄を迎え、春分を迎えて、辺りはすっかり春めいてきた。
木の枝の蕾が膨らみ、小さな羽虫が飛び始め、少しずつ生き物の気配が増えていく春の今時期は、なかなかどうして気分が良い。スギ花粉は怖いが、何だか無性に外に出かけたくなる。
そんなわけでルンルン気分で近所の散策コースを歩いてみたところ、スカシダワラ(クスサンの繭)を沢山見かけた。はじめに写真を撮り、後日お持ち帰りし、結局最終的には中身まで取り出してしまった。
蛾というものは本当に気持ち悪くて恐ろしいが、好奇心に負けて大嫌いな蛾を触ってしまう自分も、我ながら恐ろしい。そしてそんな風に人を妙に積極的にしてしまう春が、一番恐ろしい。
3月7日
私は蛾が大嫌いなので、クスサンについて今まで詳しく調べたことが無かった。だから時々冬の里山で見かけるスカシダワラに中身が入っていた場合、それは生きているのだと思っていた。冬を蛹で乗り切る蝶も多くいるし。
で、今回よく調べてみて初めて、クスサンが冬を卵で過ごし、4月頃に孵化し、7月頃に蛹化し、9月頃に羽化して交尾・産卵、卵でまた冬をしのぐ、というサイクルで生きていることを知った。つまり冬のスカシダワラに入っている蛹は死骸ということだ。
私は蛾が嫌いだが、蛾の何が一番怖いかって、バタバタ羽ばたくのが怖い。蝶に比べて飛ぶのがかなり下手なので、高確率でぶつかってくるのも怖い。だから羽ばたかない蛾の幼虫は多少怖くない。蛹も、腹をウニウニするのはあまり気持ちいいものではないが、まずまず怖くない。そして蛹が死亡しているならばなおさら怖くない(たぶん)!
よーし、じゃあスカシダワラを持ち帰って、中身を写真に撮りましょう!!
3月24日
さて、持ち帰ったスカシダワラの中から、羽化に成功したらしき個体をピックアップし、早速写真に収めていく。
抜け殻のヤツは触っても大丈夫だったので、今度は羽化に失敗した、中身の詰まったヤツも取り出してみることにした。↓↓
3月25日
次の日も写真撮りの続きをして楽しんだ。
いやぁ、気持ち悪くも貴重な体験でした。
しかしスカシダワラの頑丈さには驚いた。今回採集したスカシダワラは多分去年羽化した、もしくはしようとしたものが枝についていたのだと思うが、あれだけ丈夫なら、もしかしたら2年モノ、3年モノなんてのもあったりするのかもしれない。
さて、もうすぐ桜が咲き出す頃ですな。次は桜の写真を撮りに盛岡のめぼしいところを巡るぞ。その後は樹木に付いた葉の緑を撮って回り、その後は虫の季節を堪能する。並行して妻と一緒に娘や息子と遊ぶ。今にも先にも楽しみが沢山。
春の次には必ず夏が来る。日本を離れるか、何かの都合で長期間眠り続けるか、死ぬか、地球が滅亡するかしなければ、春の次は夏だ。いや、眠り続けても、自分が死んでも、日本の大地には春の次に夏が来る。春の後にすぐに秋が来たり、春から冬に逆戻りしたりすることはない。その連続性を信頼しつつ、そこから自分や大事な人が離れる可能性も考慮しつつ。なるべく後悔が少なく済むよう、今を堪能し、かつこれから先にも大いに期待を持ちながら、何気ない日々を送りたい。
(2022.3.26)