生死事大

彩雲。 2022.6.5

人間一人の体には細胞が約60兆個あるそうだ。部位ごとに細胞の寿命は違い、腸の粘膜細胞が一番短い。2~3日。骨細胞や脳神経細胞は断然長くて、年単位の寿命を持つという。
寿命が来た細胞は死んで垢になったり、便、尿、汗に混じったりして自分の体から離れていく。60kgの人間だと1日約1kg分、細胞が入れ替わるという。だから昨日の私と今日の私とでは、私を構成する細胞はちょっと異なる。1ヶ月前、1年前と比べれば大分違う。

なのに、創業以来注ぎ足し注ぎ足し守って来た老舗料理屋の秘伝のタレと一緒で、「私」もずっと変わらないと感じてしまう。そして時間が経つほどに尊いものに思えてしまう。
時を経て変わらない、変わらないから尊いという誤解が、苦しみの源泉になる。「私」は日々変わり、一瞬たりとも止まることがない。永遠不変、唯一無二まことの「私」などというものはない。それに気づいて執着を上手に手放すことができた人は、人生のマスターだ。

禅宗の木板にある偈(げ)
※曹洞宗バージョン

生死事大(しょうじじだい)
無常迅速(むじょうじんそく)
各宜醒覚(かくぎせいかく)
慎勿放逸(しんもつほういつ)

【読み下し】
生死は事大にして
無常は迅速なり
各々宜しく醒覚し
慎んで放逸すること勿れ

【意味】
二度とない今生の自分。生まれてから死ぬまでの間にどのように生きるかが、人生の超重要事項です。
あらゆる物事は止まることなく変わり続け、時は瞬く間に過ぎ去ります。
皆さんよくよく目を覚ましてください。
ハッキリ意識して過ごし、人生を浪費することが無いように。

漢字にして16文字という超短文、なのに実に滋味深い。折に触れ口にすることで、今私は何をしたい?そのしたいことを今しようじゃないの、という意欲がじわじわ沸いてくるんですよね。

2025.6.5

天峰山で見た夕暮れ。2025.6.2

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