対い鶴

少し日がズレたが、妻の誕生日のお祝いでホテルメトロポリタンニューウィングの和食レストラン「対い鶴(むかいづる)」に行ってきた。

ホテルメトロポリタンニューウイングは妻とお見合いをした場所で、結婚式をした場所でもある。対い鶴は結納後に両家のお食事会を行った場所だ。二人にとって思い出深い場所だ。

当日、盛岡駅の近くを歩いている時に、娘が妻に向かって急に「お母さん、おなか重い?」と聞いた。全く脈絡が無く内容も奇妙な一言に妻と二人で一瞬ハテナ?となる。
ちょうど1年前の1月15日に出産に備えて仕事を辞め、最後の勤務の帰り道にお腹にいる子どものことを色々考えながらこの道を歩いていたのを思い出した、と妻が言う。そうだなぁ…、と答え、次の言葉をどうしようか思案する間に、「どうして『お母さん、おなか重い?』って聞いたの?」と娘に聞くタイミングを逸してしまった。むう、後から聞いても答えてくれないんだよな。

子どもには不思議な力があるという話を聞く。ひょっとして、亡くなった息子が妻のお腹を懐かしがって一瞬戻ってきて、娘がそれに気づいたのだろうか。それとも次に生まれる可能性のある赤ちゃんが母親になるかもしれない人間のお腹の住み心地を見に来たとか?いやいや待て待て、息子を亡くした我々に新たな命を預かる資格があるのか?それにブログで読んだレインボーベビーの光と影。子を亡くした悲しみが新たな子を授かる喜びとどう化学反応する?そもそも子どもは授かりものだから、欲しいと思ったとしてそうすぐにうまく行くとは限らない…。うーむむ残念、下手の考え休むにニタリ。悪者顔でニタリ、とするしかない。

さて対い鶴に到着し、さっそく個室に通して頂いた。ここは予約時に空きがあれば追加料金なしで個室を利用できる。小さな子ども連れの親にとっては実にありがたいことだ。こんなにお洒落なホテルの和食レストランで、他人に気兼ねすることなく落ち着いて過ごせるというのは。

妻と私で一つずつ料理を頼み、それを係のお姉さんが気を利かせて用意してくれた空のお膳に取り分けて載せて、お子さま和御膳の出来上がりだ。初めは「オムライス来るかなぁ?」と言っていた娘も大満足の様子。お姉さんの気遣いに感謝する。

妻は蕎麦膳、私は和御膳「源」を頼んでシェア。娘は二人の料理の良いとこ取り。2021.1.16。
「美味しい~!!」の顔。その笑顔をずーっと近くで見ていたいものだが、いつまで一緒に遊んでくれるのだろう。10数年後が恐ろしい。世のお父さん方は皆同じようなことを思ってきたのだろうか(笑)。2021.1.16。
料理の中で、みかんシャーベットが一番美味しかったそうだ。一口いただいたが実際大変美味だった。2021.1.16。
家族みんなで。2021.1.16

ここに家族で来たのは3回目なんだよなぁ、と昔(と言っても1~2年前だけど)を思い出し、しみじみとなる。が、細部を思い出せない。全く、記憶力の良い人間に生まれたかったぜ。と思いながらスマホの写真アルバムを見返し、ああそうだった、そうだったと深くうなずく。

それにしても写真は面白い。写真を見ながら昔から今までを行ったり来たりしているうちに、時間が経つのを忘れてしまう。あぁ、もしかすると死に際に見るという走馬灯はこんな感じなのかも。
そうだ、写真データをドンと突っ込むと上手い具合に次から次へと場面が切り替わる「走馬灯アプリ(視覚版)」なんてものを作ったら、ヒットするかもしれない。ミソは見終わった後で「思っていたよりあっという間だったな」とちょっとでも思わせること。そのためには、似たような構図の写真は上手に省きつつも重要な一枚は残さなければならないし、写真の重要度によって切り替わる速度に緩急をつけつつ見ている人の脳が処理できる速度を極端に超えないようにしなければならない。
…うーん。自分専用なら出来るかもだが万人向けは難しそうだ。

ということで過去の写真を以下に(笑)。

初めて娘と対い鶴に入った日。2018.10.10
娘はまだ0歳。2018.10.10
何でも口に入れて確かめていた頃。2018.10.10
ここからの4枚の写真は2019.917に撮ったもの。
このときはプチ贅沢と称して期間限定メニューの「ミニわんこ膳」をいただいたったっけな。2019.9.17。
娘はまだ離乳食を食べていた頃。2019.9.17。
食事中に集中力が切れて逃げ出したりしていた。2019.9.17。

写真を見ていて痛感するが、亡くなった人間との思い出は、もう増えることは無い。特に幼いうちに失った子との思い出は圧倒的に少ないままだ。これについて書きたいことはたくさんあるが、ここでは「その分一つひとつの思い出の価値が極端に増すのだ」とだけ書いておく。

亡くなった息子に思いを馳せながら、娘の人生は楽しみで満たされますように、苦労はなるべく少なくありますように、と強く願う。

妻よ誕生日おめでとう。これからもよろしくm(_ _)m

(2021.1.20)

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